漆器について

    漆器は、日本、中国、韓国、東南アジアなど漆産出国で発達した東洋独特の工芸で、なかでも日本の漆器は、早くから世界的名声を博し、漆器を総称して「ジャパン」と呼ばれました。平安時代から日本の漆芸を発展させてきた京漆器は、最高の素材を選択し、高度な技術で作られます。器物の強さ堅さはもちろんのこと、平面・曲面・角の形状の美しさと、気品のある優雅な加飾のデザインが特徴です。

    木地

    京都の木地は肉厚で力強い地方の漆器とは対象的に、極めて薄い仕上げにすることが特徴です。

    塗り

    塗りの技法は多岐にわたります。表面の光沢、木地種類や漆の種類による素材感の表現、漆の色などで様々な表情がみられます。本堅地塗り(ほんかたじぬり)と呼ばれる最も堅牢な塗りは33~36の工程があり、最低でも1~2年かけて塗り上げます。

    蒔絵

    蒔絵とは、漆で描いた文様の上に金粉・銀粉を蒔いて華やかな絵模様を生み出す技法です。ひと口に蒔絵と言っても、材料や工程によってさまざまな技法が受け継がれています。とりわけ長年、都の地であった京都では、平安京の時代から、朝廷や寺社が求める超一流品が作り続けられ、蒔絵の技法が磨き上げられてきました。

    置目 (おきめ)

    置目とは蒔絵の元になる下絵のことです。薄い美濃紙に描かれた下絵の輪郭を、裏から漆(うるし)でなぞり、これを器面に当てて転写します。そこに胡粉(ごふん:貝殻から作られる顔料)を蒔きつけて輪郭が見えるようにします。下絵であるため通常見ることはできませんが、象彦では過去に製作された品の置目が約五千枚近く残されており、今でも大切に保管されています。